ワスレナグサ 5

ワスレナグサ 5

ナグサ!!モウヤメルンダッ!!トゥヘアー!アスランヅラ出る!!

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モモイ「助かったよ〜!紙がもうぶわーっ!って印刷機から出てきちゃってさ〜」

彼女に押し付けられた紙束を左脇に抱えながら後についていく。

彼女の名は才羽モモイ。ゲーム開発部のシナリオライターで、作るシナリオの3分の2はクソシナリオだが本気を出すと文豪と化する女として有名だ。

ナグサ「・・・・この紙束は?」

モモイ「ゲームのシナリオ!スパコンの演算で書き出してるんだ!あ、もちろんベースは私が書くし、ちょくちょく付け加えるけどね!」

・・・何はともかく、彼女達はゲーム開発のためにすごい機材を使っているようだ。

モモイ「ささ、入って入って!」

ゲーム開発部に来てしまった。

ミドリ「お姉ちゃん大丈夫だった??ってあれ?そこの人は」

モモイ「助けてくれた人!名前はえっと・・・」

そういえば、言ってなかったね。

ナグサ「御陵ナグサです。百鬼夜行の。」

モモイ「百鬼夜行の?!わざわざここまで来てくれたの?!」

・・・・義手のメンテのために来たということは置いておこう。

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あの後、軽く雑談とゲームをして別れた私は、エンジニア部室に戻った。

ヒビキ「・・・お帰り。義手のメンテは終わったよ」

そういうと彼女は義手を取り付けてくれる。

カチッという音と共に、私は右腕を取り戻した。

ヒビキ「フィードバックを受けて色々調整したんだけど、どう?」

簡単な動作をやってみる。

・・・かなり動きが良くなっているようだ。

ヒビキ「・・・モジュールを新しいのに取り替えて、今までより3%早い反応ができるようにした。」

ナグサ「ありが・・・とう」

ヒビキ「あとビームサーベルは危ないからオミットしてヒートロッドにしたのと、時計機能と心拍数測定機能とワークアウト機能と・・・・」

・・・。

またさらに機能をつけられちゃった・・・。

ふぅと一息つくと、奥の部屋の扉が開き、『証』を持ったウタハが出てきた。

ウタハ「解析終わったよ。」

彼女は私にそれを返すと説明を始める。

ウタハ「・・・かなり高価なライフルだね。特に銃身はかなりのものだ。トリニティの北部・・・今はアリウスか。あそこでしか採れない金属を使ってる。それなのにこの構造、いつの時代のだい?」

クズノハの時代・・・すなわち想像しきれないほどの昔だ。

ウタハ「ただ、これの複製を作るのはほぼ無理だね。これが幽霊を捕まえられる特別な銃である理由がわかったよ。この銃のこの部分。そうここにかなり特殊なクリスタルを使用していてね。おそらく現在のキヴォトスでは出てこないとてつもなく・・・」

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『証』を肩にかけ、重い足取りでミレニアムタワーを出る。

専門的な用語が続いたためぼんやりとしか覚えていないが、つまりは素材にキヴォトスの由来ではないものが含まれており、それに関しては新素材開発部をもってしても不可能なので再現することはできない。

つまり、私が考えていた・・・ユカリに渡す代わりの銃は作れそうにないということだ。

ナグサ「・・・どうしよう」

帰りの鉄道内でも、私は考えていた。

アヤメとの繋がりを失うのは怖い。

でもこの銃を私が独占するわけにはいかない。

ただでさえアヤメとの思い出の品が少ないのに。

ただでさえ委員長ですらないのに。

彼女に会いたい

彼女は私のことを友達だと


ナグサ「ああああああっ・・・うっうっうあっ

うおおおぁああああ~~~~~~~~あああっ・・・」


考えたくもないことを考えた挙句、電車内にも関わらず体のあちこちが痛くなって、私は叫びながら意識を失った。

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『あっ、起きた起きた!ナグサちゃん〜。また倒れてたんだよ〜』

目がぼやけてよく見えない。

『待ってて、水持ってくる!』

この声は・・・

ああ、間違いない。

『はいっ!』

手渡されたコップを手に取り、水を飲む。

だんだん視界のぼやけが失われてきて、聞こえてくる声もはっきりとしてくる。

ユカリ「目もはっきりしてきましたわね!電車で倒れたと連絡をいただいた時はもうどうなることやら・・・」

・・・・

ユカリだった。どうやら現実のようだ。

目玉を動かして辺りを確認する。

・・・私の家だ。間違いない。

ナグサ「アヤメ・・・・」

ユカリ「身共はユカリですわ」

・・・間違えてしまった。わざとじゃない。

ユカリ「先輩。その、お身体とか大丈夫ですの?」

ナグサ「・・・・大丈夫・・・だよ。疲れが溜まってただけ。」

それよりも、あの声は・・・

あの声は一体・・・

ユカリ「キキョウ先輩が、明日の合同火力演習は休んでいいって言ってましたわ。」

ナグサ「それは・・・まずいでしょ・・・っ。私が行かないと・・・・」

ユカリ「ああお身体に・・・・」

起きようとして体を痛める私を抑える。

ユカリ「・・・・心配ありませんわ。キキョウ先輩やレンゲ先輩が全力でやると言っていましたし、なにより身共も、あの頃から随分成長して・・・もう一人前といっても差し支えない実力ですの!」

自信満々に胸を張る彼女。

色彩との戦い、シュロとの戦い、そしてカルテルとの戦いを通して、彼女は成長した。それは誰にでもわかること。

ユカリ「だから・・・」

『ナグサちゃんはここで待ってて!すぐ済ませてくるから!』

!!

その声に目を見開いてしまう。

ユカリ「せ、先輩・・・?」

正気に戻り、頭を振って雑念を振り払う。

ナグサ「・・・・大丈夫。・・・・わかった。金曜日は休むから」

そう言って、私は目を閉じた。

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金曜日の夕方

合同火力演習も佳境に差し掛かった頃、私は百鬼夜行の神木展望台にいた。

結局今日はユカリのお言葉に甘えて、朝から夕方までぐうたらしてしまった。

そこで和菓子を食べ、抹茶を飲んでいると、隣に座ってくる人がいた。

ナグサ「あっ、あれ・・・」

カンナ「・・・お久しぶりです。ナグサさん。・・・戦争の・・・いや、火曜日の会議以来ですね」

・・・火曜日の会議?

・・・彼女もあれに出席していたのだろうか

カンナはお盆を野点椅子の端において、隣に腰掛ける。

ナグサ「・・・カンナ局長は、なんでここに?」

カンナ「本当は対テロ重視の公安局勤務なので、平時にあまり動き回ることはしないのですが、たまには私も街の見回りをやりたいと思って、百鬼夜行を巡回していたんですよ。フブキが、たまには現地で休憩するのも悪くはないと言っていたのでここにきました。」

なるほど。

・・・何か話したいが、なんの話題を話せばいいかわからない。

すると、彼女は私の右腕に視線を向ける

カンナ「・・・切り落としたのですか。あの右腕」

ナグサ「うん。黄昏に汚染されて動かなかったし、それにこの義手なら『証』の性能を引き出せる」

カンナ「・・・そ、そうなんですか」

そして少しの沈黙が流れる。

やはり気まずい。初対面ではないが実質初対面だ。

すると、彼女は会話のキャッチボールを始めてくれた。

カンナ「・・・ところで、あの企画になぜ参加しようと?」

・・・初めてだ。

そこに切り込まれたのは初めてだった。

誘われたからなんていうやわな返事をするつもりはない。

でも話していいのかわからない。

ナグサ「・・・その、えっ・・・と。」

カンナ「答えたくないのなら、答える必要はないです。・・・取り調べというわけでもないですし、きっと、答えられないくらい、辛い理由でしょうから」

彼女はより深く腰掛けると、指を組んで俯く。

カンナ「・・・すこし、私の話をします。・・・・私が『キヴォトスの外』に興味を持った理由を」

初めて見た。普段、威圧感がすごいだの、キヴォトスで2番目に怖い顔だの言われている彼女の妙にしおらしい姿。

カンナ「・・・・キヴォトスの外の、まさに最果ての方には、『生と死の狭間の世界』があると聞いたからです」

?!

彼女が乱心か否かは置いておいて、生と死の狭間の世界に興味があると言うことは即ち・・・

カンナ「・・・大切な部下がいたんですよ。射撃も下手で、話術も弱い。お巡りさんとしてのセンスはあったけど、彼女が目指した警備局には全く向かないヤツでした。」

ナグサ「・・・・それが・・・・」

カンナ「ええ。アビドス戦争で行方不明。ミサイルの位置から察するにおそらく死んだんだと思います。」

また沈黙が流れてしまう。

カンナ「・・・彼女ともっと見ておくべきだった。もっと彼女が考える『正義』や『理想』に耳を傾けるべきだった。・・・・そう思っていた時なんですよ。あの話を知ったのは。」

戦後、さらに内戦までやって廃墟となったトリニティの復興支援に行った時に、運んでいた本の1つから知ったそうだ。

キヴォトスの外、最果ての地に生と死の狭間があり、そしてそこには全ての魂が眠っているということを。

カンナ「・・・最初はくだらないと思って流していたんですが、帰ってから・・・少し。やっぱり、信じてみたくなりまして」

ナグサ「それは・・・どうして?」

カンナ「都合がいいからです」

茶碗を再び手に持って一口飲んで、彼女は天を仰ぐ。

・・・・都合がいい?それはどういう・・・・

カンナ「もしも死の先に何もないと考えたら、私はもう2度と彼女に話をすることも・・・謝ることさえ叶いません。それは嫌なのです。・・・たとえ本当に『生と死の狭間』なんてものが存在しなくても、あると信じていれば心が楽になるんですよ。・・・信じるから辿り着きたいと願うし、辿り着きたいと願うから企画に参加する。これが私が外の世界に興味を持ち、キヴォトス移転計画に賛同した理由です。」

・・ああ。よかった。

私と同じように、『過去』をみている人はいるんだ。

ナグサ「・・・実は・・・・・・・・」

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土曜日

今日は活動がない。なので真昼間まで寝てしまった。

私は重たい体を起こし、ひと通りの準備をしていつもの服に着替えるとラジオをつける。

『次のニュースです。本日朝、ゲヘナ自治区アラバ海岸第2軍港にて、新型艦の進水式が執り行われました。羽沼マコト議長によりグラーフ・ツェッペリンと命名された本艦はキヴォトス初の『ドローンの搭載と運用を前提とした艦船』で、4月以降続いていた軍縮方針に伴い建造が中断されていましたが、新たなる脅威に備え・・・』

『レッドウィンター自治区では、9月より東西横断鉄道の運転が停止されており、これに対する労働者の抗議デモの参加者が日に日に・・・・』

『アビドス自治区は本日、アビドス砂漠の砂を加工したコンクリートの販売を開始しました。本来砂漠の砂は小粒で加工性に乏しいですが、ある程度加熱し粒を合成し、大きくすることでセメントに混ぜるとちょうど良い強度になり、建材として活用できるということです。砂狼シロコ会長は声明を発表し・・・・』

私はラジオを切る。

・・・いま思ってみると、尾刃カンナという似たような境遇の人と出会ったことで、私の心は少し晴れたかもしれない。

そう思い、再びN-2384先遣隊参加への同意書と向き合った。

書くべきか、書かないべきかを今後こそ決めよう。

そんなことを考えていると・・・

『ナーグーサーちゃん!!』

あぁ。来た来た。

また和菓子を作ってくれたようだ。

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ナグサの幻聴:いよいよ強くなってきたナグサの幻聴。私はエルフだからひぐらしなんちゃらのことはよくわからないけど、L3ーくらいじゃないだろうか。

モモイとの会話:ナグサはここでコミュを進められなかったのでそこそこやばいです。

カンナ登場:公安局なのに生活安全局と同じ業務内容もやり始めた尾刃カンナ(多分17歳)。さすがはヴァルキューレ野球部のエース兼4番である。カンナも先遣隊に参加します。

グラーフ・ツェッペリン:戦後に完成。要するに空母。搭載数は250機。これでカルテルトリオがどこにいても爆撃できるね!

東西横断鉄道:横にでかいレッドウィンターを東西に繋ぐ鉄道。9月が始まってから何故か運行休止中。

新コンクリート:マコトを見習いインフラ事業にも取り組むようになったシロコの新事業。ミレニアムの新素材開発部と共同研究したので利益は折半。ん、なら2倍売ればいい。

すでに山海経やアリウスなどに結構売った。

N-2384:キヴォトスから4903マイル(およそ7890km)ど離れた大陸。どのような生物がいるかや、古文書に書いてある環境が存在するかはともかく、マコトはここにキヴォトスを移転しようと考えている。

おまけ

とある世界線

シロコ「ん、議長との友好の証に、アビドスサファリパークの新エリアを紹介する」

マコト「キキッ。サファリパークの王道、ライオンだのチーターだのは堪能させてもらったが、この砂漠エリアだと何が出るんだ?」

シロコ「すごい珍獣だよ。世界に一体しかいない、絶滅危惧種。」

マコト「・・・世界に一体しかいない?!」

シロコ「あ、いた」

ハナコサマ・・・ヒナサマ・・・ウウ・・・ミンナ・・・

シロコ「ん、ミレニアムハイカイロボモップ。サオリが見つけてきて、命名してもらった。生態はよくわからないけど世界に一体しかいない絶滅危惧種なのは確か」

マコト「なっ・・・何ィ?!本当にこんなレアモノが実在しているとは!!!」

イロハ(あれアリスさんですよね・・・)

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p.s.モウヤメルンダッ!!がペンネーム的にわかりにくかったりアレすぎてアレならアレなのてモウヤメルンダッ!!/アスラン・ヅラとかにしたらわかりにくいことはなさそうですね←?????

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